日本では、1年過ぎても妊娠しないカップルを不妊症と定義しています。通常、避妊をしないで性交を行うと、1年後には約80%のカップルが妊娠します。また、この80%の多くは6か月までに妊娠しています。次の1年間で妊娠する率は10%、3年目にはほとんど妊娠が期待できません。
出産し、生児を得るためには①排卵が起こり→②適切なタイミング、場所で精子と卵子が出会い→③正常な受精が起こり→④子宮内に着床し→⑤順調に発育するというステップが必要になります。どこかの段階で障害が生じてしまうと成功することはできません。
分類しますと主に
Ⅰ 内分泌因子 (排卵障害)
Ⅱ 卵管子宮因子 (通過障害、着床障害)
Ⅲ 頸管因子 (通過障害)
Ⅳ 免疫因子 (受精障害、着床障害)
Ⅴ 男性因子 (受精障害)
Ⅵ 原因不明
などが挙げられます。また、各カップル間で必ずしも原因が1つだけであるわけではなく、複数の原因を持ち合わせている可能性もあり、いきなり治療へ進むことはせず、まずは原因を見つけるための一通りの検査を受けた方が良いと思われます。その後、排卵誘発剤を用いたり、人工授精を行う一般治療を数か月行い、それでも妊娠できない場合にはより専門的な治療を考慮すべきと考えます。また、一般検査では調べることができる内容に限界があり、例えば卵子や精子の質や機能などは調べることはできません。実際、検査で異常がないのになかなか妊娠できないという方も少なくありません。体外受精では直接卵子と精子の受精を確認するので、治療を進めながら一般検査では調べることのできない範囲もある程度カバーすることが可能だということを知っておいたほうがよいでしょう。
一般不妊検査 → 一般不妊治療 → 高度不妊治療(体外受精)
患者様の年齢や背景によって必ずしも同じスケジュールにはなりませんが、以上のようにステップを進めていくのが通常の流れになります。それぞれの項目について別ページでそれぞれ詳しく説明します。
当院は高度不妊治療に特化したクリニックであり、一般検査・治療は原則行っておらず、他のクリニックで一般的検査・治療を行うもなかなか妊娠に至らない方が紹介されています。
初婚年齢の高齢化が進む中で、体外受精が必要となる方の多くは加齢に伴う卵子の質の低下が問題となっています。実際、当院でも受診患者様の平均年齢は上昇傾向であり、加齢が問題となっている方が多いのが現状です。妊娠は卵子の老化との戦いであり、37歳を過ぎると妊娠率はガクッと下がっています。また、40歳以上になると流産率も高くなってきます。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)とは卵巣の予備の卵胞から分泌されるホルモンで、卵巣の予備の卵の数を示します。質ではありません(その卵の質がいいか、順調に育つかは年齢に一番よく相関します)。当院では、初診の方に検査を実施し、治療の参考にしています。
※AMH=妊娠率ではありません