培養室は、採卵した卵子を精子と受精させ培養する所です。受精卵の培養環境は妊娠率に大きな影響を与えます。

広島HARTクリニックはART医療(生殖補助医療)に特化したクリニックとして絶えずソフト・ハード面を進化発展させています。中でも卵子・精子・胚・凍結胚の管理を行うART Laboratoryには紡錘体観察(Polarizing Microscopeによる)や、PIEZO ICSI(顕微授精システム)、全症例・すべての卵子・胚の経時的胚観察(タイムラプスシステム)などを先駆的導入しその有効性を報告・発信しています。今回ART Laboでの作業内容を紹介するMovieを作成しましたので、ご参考にしてください。

卵子の採取(採卵)

卵巣内にある卵胞を穿刺し卵胞液を吸引することで、排卵直前の成熟卵の採取を行います。採卵を行うオペ室の隣に培養室があります。

精子の処理

提出していただいた精液を培養液による洗浄と遠心分離による濃縮を用いて、運動性の高い良い精子を選別してから使用します。

卵子と精子を受精させる

患者さんに合わせて、体外受精(IVF)または顕微授精(ICSI)を行います。当院では顕微授精の際にピエゾ(PIEZOドライブユニット)という器械を用いて、卵子にダメージを与えないようにしています。

受精の確認

受精の確認を行い、その際に卵子の半分以上に受精の兆候が見られない場合は、顕微授精(レスキュー ICSI)を施行する場合もあります。

胚移植

受精が確認された後は、胚発達の状態をタイムラプス観察システムにより培養器外に出すことなくモニター解析し、培養を行います。このシステムにより胚発達過程の細かい情報が得られ、培養器扉の開閉を行わないので培養環境を乱すことなく培養することができます。その後、子宮内膜の状態を確認し子宮内に胚を移植します。

胚の凍結保存

移植に用いたもの以外に良質な胚がある場合などは凍結保存を行います。当院では、余剰胚を採卵後5日目まで培養し、形態的に良好な胚盤胞のみを凍結しています。凍結方法はガラス化法を用い、氷の結晶が卵細胞内に起こらないように極少量の凍結保存液と混和して短時間で急速に凍結し、-196℃の液体窒素内で保存します。ガラス化保存された胚盤胞の融解後の生存性は99.1%以上(2020年)です。